暗号資産に係る令和8年度税制改正のポイント解説

~申告分離課税20%への大転換~

令和7年12月19日公表 与党税制改正大綱より | 2025年12月 金融庁資料参照

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目次
  1. 現行制度の3つの問題点
  2. 現行と改正後の比較
  3. 改正内容の詳細(5つのポイント)
  4. 施行スケジュール
  5. 注意すべき点・残された課題
  6. 今から準備しておくこと
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現行制度の3つの問題点

暗号資産(仮想通貨)取引による所得は現行制度では「雑所得(総合課税)」として扱われており、個人投資家から長年にわたり改善が求められてきました。

問題① 最大55%の高税率

給与所得等と合算される累進課税のため、所得水準によっては税率が最大55%(所得税45%+住民税10%)に達します。利益の半分以上が税金になるケースも。

問題② 損失の繰越不可

株式は損失を翌年以降3年間繰り越せますが、暗号資産は年をまたいだ損失の繰越控除が認められていません。ボラティリティの高い資産には特に不利な制度です。

問題③ 国際競争力の低下

米国は20%、シンガポールは長期保有で実質0%。日本の最大55%は国際的に突出して高く、国内投資家の流出や市場縮小を招いていました。

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現行制度と改正後の比較
現行制度(改正前)
課税方式
総合課税(雑所得)
給与・事業所得と合算
税率
最大 55%
所得税45%+住民税10%
損失の繰越
不可
当年のみ雑所得内で通算可
他所得との損益通算
不可
確定申告
総合課税のため複雑
改正後(施行後)
課税方式
申告分離課税
株式・投信と同様の扱い
税率
一律 20%
所得税15%+住民税5%
損失の繰越
3年間 繰越控除可
暗号資産の損益同士で通算
他所得との損益通算
原則 不可
確定申告
分離課税でシンプルに
税率の比較イメージ
現行(最大)55%
所得税45% + 住民税10%
改正後20%
所得税15% + 住民税5%
※現行の税率は給与所得等との合算額により異なります。最大55%は所得税最高税率45%+住民税10%の合算。
税額シミュレーション(利益100万円・年収600万円の場合)
現行 約40%
約40万円
40万円
改正後 20%
約20万円
20万円
※税率は所得状況により異なります。概算のシミュレーションです。
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改正内容の詳細(5つのポイント)
ポイント1 申告分離課税20%への移行

「特定暗号資産」の取引から生じる所得について、他の所得と分離して一律20%(所得税15%+住民税5%)で課税されます。これは株式・投資信託と同じ水準です。

ポイント2 3年間の損失繰越控除制度の創設

暗号資産取引で損失が生じた場合、翌年以降3年間にわたって特定暗号資産の利益と相殺できます。

繰越控除の活用イメージ
Year 1
損失
300万
300万円の損失
→翌年へ繰越
Year 2
利益
500万
500万円の利益
課税対象
200万
500万-300万
=200万に課税
=
節税効果

60万円
節税
(300万×20%)
ポイント3 分離課税の対象範囲(「特定暗号資産」)

すべての暗号資産が対象になるわけではなく、金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産(特定暗号資産)に限られます。

▼ 分離課税の対象(予定)
国内取引業者経由の現物取引
特定暗号資産のデリバティブ取引
暗号資産ETF(投資信託)
登録銘柄(BTC・ETH等の主要銘柄)
▼ 対象外の可能性が高いもの
海外取引所での取引
DEX(分散型取引所)での取引
個人間取引
登録外銘柄(詳細は今後確定)

※具体的な対象銘柄は金商法改正後の政令等で明確化される予定です。

ポイント4 取引業者による税務当局への報告義務の創設

暗号資産取引業者が投資家の取引情報(氏名・住所・マイナンバー・取引内容等)を翌年1月31日までに税務署へ報告する義務が新設されます。分離課税の適用開始から1年遅れて施行予定です。

ポイント5 消費税上の取扱いの変更

暗号資産の位置づけ変更に伴い、消費税上の扱いが「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」へ変更されます。消費税は引き続き非課税ですが、課税売上割合の計算(分母への算入)に影響が生じる点に注意が必要です。

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施行スケジュール

新税制の適用開始は「金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年の1月1日」とされており、金商法改正の進捗次第です。現状では2028年1月施行が有力とみられています。

2025年12月19日 ✅ 完了
与党「令和8年度税制改正大綱」公表
分離課税化が正式に明記される
2026年(通常国会)← 現在
税制改正関連法案の審議・成立
金融商品取引法改正法案の提出・審議も予定
2026〜2027年
金商法改正の施行
暗号資産が金融商品として正式に位置づけられる
2028年1月1日(見込み)
新税制(分離課税20%)の適用開始
金商法施行日の属する年の翌年1月1日から適用
2029年1月1日(見込み)
取引業者の税務署への報告義務開始
分離課税施行の1年後から
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注意すべき点・残された課題
他の所得との損益通算は不可
特定暗号資産の損失は、給与・事業・不動産所得などとは相殺できません。ステーキング報酬や公的年金との通算も不可の見込みです。あくまで「暗号資産同士」での繰越控除に限られます。
移行前の含み損・確定損失は持ち越せない
現行制度下で確定した損失や移行時点の含み損は、新制度に持ち越して繰越控除に使うことができません。令和8年(2026年)中に含み損を確定させて雑所得と相殺するという戦略も選択肢の一つです(価格変動リスクとのトレードオフです)。
「特定暗号資産」の対象銘柄は今後確定
どの銘柄が分離課税の対象になるかは、金商法改正後の政令等で明確化される予定です。ビットコイン・イーサリアム等の主要銘柄は対象が予想されますが、全銘柄への適用ではない可能性があります。
海外取引所・DEXは引き続き総合課税の可能性
国内の登録業者を経由しない取引(海外取引所、DEX、個人間取引等)は分離課税の対象外となり、引き続き最大55%の総合課税が適用される可能性があります。
施行時期は金商法改正の進捗次第
新税制の適用開始は「金商法改正法の施行の翌年1月1日」であるため、金商法改正が遅れれば施行も後ろ倒しになります。2028年施行はあくまで現時点での見込みです。
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今から準備しておくこと

施行まで時間があるとはいえ、今から準備しておくことで移行時の混乱を防ぎ、メリットを最大限活かせます。

過去の取引履歴を整理するいつ・いくらで買い、いつ・いくらで売ったか正確に把握。取引所ごとのCSVや海外ウォレットの記録も含めて。
現在の含み益・含み損を確認する分離課税移行後の戦略立案のために、現時点の損益状況を把握しておく。
含み損の確定タイミングを検討する令和8年(2026年)中に含み損を確定させれば、雑所得(総合課税)と相殺可能。専門家に相談の上検討を。
金商法・税制改正の動向をチェックする金融庁・国税庁のウェブサイトや当事務所のコラムで最新情報を定期的に確認。
DeFi・NFT・ステーキングの取り扱いを確認する複雑な取引は制度の詳細確定後に改めて整理が必要。現段階では適切な記録保全を。
大きな利益・複雑な取引は専門家に相談する制度移行期の税務判断は複雑です。税理士等の専門家への相談をお勧めします。
ご注意 本コラムは令和7年12月19日公表の「令和8年度税制改正大綱」および金融庁公表資料に基づき作成しています。今後の法令改正・政令等により内容が変更される場合があります。個別の税務判断については状況により異なりますので、ご留意ください。
掲載日:2026年4月 当事務所では暗号資産の税務に関するご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。