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令和8年度税制改正大綱
開業医・医療法人への影響を総点検

2025年12月19日与党決定・同年12月26日閣議決定を踏まえた実務解説

· 令和8年税制改正大綱,医療法人,開業医,医療

令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正大綱」は、物価高への対応や経済活性化策が大きな柱となっているが、医療・健康分野においても注目すべき改正が複数盛り込まれた。本稿では、医療関係者や医療機関の経営に直結する主要な改正項目を整理し、その背景と意義を考察する。

1.地域医療構想の推進を支える優遇税制

登録免許税・不動産取得税の軽減措置延長+医師偏在対策の新設

医療機関の再編や統合に伴う不動産取得コストを軽減することで、地域医療構想の実現を後押しする税制措置が2年延長される。加えて、医師偏在対策として新たな軽減措置が創設されたことが今回の特徴だ。

① 既存措置の延長:医療機関再編に伴う不動産取得の税率軽減

医療機関の開設者が、医療介護総合確保法に規定する「認定再編計画」に基づき不動産を取得した場合に、登録免許税および不動産取得税が軽減される。

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新設:重点医師偏在対策支援区域での診療所承継・開業への軽減

師が少ない地域で診療所を新設・承継する場合に、不動産取得コストを軽減する措置が今回初めて創設された。医師偏在対策への税制支援は前例がなく、今後の動向が注目される。

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2.医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予延長

持分なし医療法人への移行促進・医業承継の安定化

よろしいですか?

診療所や医療法人の後継者が承継時に直面する相続税・贈与税の重い負担を猶予する制度が、さらに延長される。地域医療を担う医療機関の廃業防止に直結する措置です。

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3.社会医療法人制度の要件緩和と外国人患者対応

自費診療費の上限見直し——インバウンド医療対応を促進

社会医療法人は、救急・へき地・周産期医療など「地域に必要な医療」を提供する代わりに、法人税・固定資産税・不動産取得税等が非課税となる特別な制度だ。しかし、自費患者への請求額が「社会保険診療報酬と同一基準」に縛られていたため、訪日外国人への対応が実態に合わないケースが問題となっていた。今回、特定外国人患者に係る要件が緩和される。

現行(改正前)

自費患者への請求額
社会保険診療報酬と同一基準
(1点=10円)

外国人患者も同じ上限に縛られ、
実態に即したインバウンド医療が困難

改正後

特定外国人患者への請求額
= 社保診療報酬の3倍以内
かつ地域の標準的料金を超えない

→ 一定範囲内での自由診療が可能に

4.国民健康保険税の課税限度額・軽減判定所得の見直し

国保財政の持続性を確保しつつ、低所得者保護を拡充

国民健康保険(国保)の財政安定化と低所得者への配慮を両立するため、課税限度額の引き上げと軽減判定所得の見直しが同時に行われる。国保は自営業者・農業従事者・無職者など、被用者保険に加入しない人々が対象で、高齢者比率が高く財政が脆弱な市区町村も多い。

① 基礎課税額に係る課税限度額の引き上げ

所得が一定以上ある加入者の国保税について、上限額を引き上げることで高所得層に応分の負担を求め、国保財政の収入増を図る。

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② 軽減判定所得の引き上げ(5割・2割軽減の対象拡大)

世帯の所得に応じて国保税が軽減される「応益軽減」制度において、軽減を受けられる世帯の判定基準となる所得額(被保険者数×一定額)が引き上げられ、軽減対象世帯が拡大する。

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